3つの食事療法がある

血糖値に問題があるとされた場合、まずは食事で調整するよう指導が入ります。血液中の糖とは食べた物によって変動するので、まずは体に入る量を適切にする事で血糖値の上昇を防ぐ方法となります。最近の食事療法の主流となっている3つのスタイルについて違いを説明します。

食事療法考え方デメリットメリット
カロリー制限食事全体の熱量(カロリー)を抑える。熱量の高い脂質を控える事になりがち。根菜など、糖質を含む物も制限はないので食事を控えたわりには効果が出にくい事も。外食がメインの場合、カロリー表示されている物を選べば良いので取り組みやすい。
糖質制限糖質(炭水化物)の摂取を制限する。やみくもに糖質を控える事で体調を崩す場合がある。また、たんぱく質や脂質は制限されないので腎臓や腸に負担がかかるという指摘もある。自炊する場合など、控えた方が良い食材がわかりやすい。
カーボカウント炭水化物の量を調べてカウントし、インスリンの量に合わせて調整する。インスリンの使用が前提となっているので予防的には取り入れにくい。安全で確実に効果が期待できる。



糖質制限についての注意

最近は効果が出やすい食事療法として、血糖値を下げる以外にダイエットの手法としても糖質制限の人気があります。ですが糖質制限に関しては色々と注意が必要となります。日本糖尿病学会が出している食事療法に関する提言の中で、糖質制限について言及されています。

低炭水化物食では心血管疾患のリスクは低減せず、総死亡率は有意に増加したと報告している。

引用:日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言

糖質制限に関する長期研究は米国の物が主で、インスリン機能の体質差が日本人とは異なり調査対象の肥満度も大きく違うためそのまま日本人が行った場合の結果として参考にはできないという前置きもありますが、現時点では糖質制限に関してはどの程度であれば安全かという線引きが確立されていない状態です。

この提言の中で引用されている米国糖尿病学会の報告を参考にするなら、「肥満者の減量を図るためには,低炭水化物食,低脂肪食あるいは地中海食は,2 年間は有効であるかもしれない」
とした上で、「最適の栄養素摂取比率は病態によって異なり,栄養素摂取比率に関わらず,総エネルギー摂取量の適正化を優先すべきである」
とまとめられています。

また、脂質摂取量の増加と糖尿病の増加は繋がりがあるので脂質量の制限を必要(総エネルギーの25%以下が望ましい)
ともあります。

東京慈恵会医科大学の宇都宮 一典氏は炭水化物制限による研究について以下のように指摘います。

炭水化物のみを制限し、エネルギーを自由に摂取させたとしている研究の多くは、総エネルギー摂取量に関する記載に乏しく、総エネルギー摂取量が低下しており、「総エネルギー摂取量とは無関係に、炭水化物さえ制限すれば減量効果がある」という解釈はできない。

引用:糖尿病Vol. 56 (2013) No. 12 p. 903-905

つまり糖質制限と言われている食事療法は結果として同時にカロリー制限を行っている状態なので効果をもたらしたのは炭水化物の制限なのか、カロリー制限なのかははっきりしていない、という事です。

炭水化物の摂取量に関しては、厚生労働省健康局がん対策・健康増進課で行われた第1回「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会の議事録では以下の水準を基本的な方針とする、という発言がされています。

BMI22の理想体重を想定し、その体重当たり25~30 キロカロリーのエネルギーとしています。そのうち炭水化物はエネルギー比で50~60%、内容的にはできる限り単純糖質を控え、食物繊維も20~25グラ ム毎日とる。

引用:厚生労働省公式サイト

インターネットで検索できる情報などには「人間は糖質を摂取しなくても問題ない」と言ったような極端な糖質制限を推奨する方法などもみられますが、糖質そのものは人間が生きて行く上で必要な成分です。極端なカロリー制限が危険であるのと同様、糖質を全く取らないなどの方法も脂質やたんぱく質の摂取量増加により高脂血症の原因になったり腎臓に負担がかかったりする危険性や、血糖値が下がりすぎる事で健康を害する恐れもあります。糖質を制限する場合はまずは間食や飲酒を控えるなど「余分な糖質を減らす」という事を念頭において、無理のない範囲で行う事が大切です。